合気道開祖の教え

3)用語解説

『合気』という言葉は大東流では特に究極奥義として扱われている技法なので、それとの混同を避けるため、開祖が完成されたものをここでは出来る限り『武産合気(たけむすあいき)』という言葉で説明します。
理解のためにその違いを明らかにすることは有益だと思いますが、どちらが強いとか優れているとかの比較にはそれほど意味があるとは思えません。
後ほど説明しますが、『武産合気』は開祖が学んで理解していた大東流の『合気』とは異なるものである、ということで十分だと思います。

『武産合気』は、神示で与えられた言葉です。
ここでいう『武産合気』は、「ある状況に最も適した方法で無限に技が生まれてくる状態をさす」という意味よりももっと広い意味を持っています。
私は、ただの状態というだけでなく、心法を主体にした『魂の比礼(霊出)振り』という根本技法を含んだ合気道として捉えました。
また、根本技法そのものも『武産合気』としました。

『神』という言葉は広い意味を含んでいます。
一般的にはキリスト教の『ゴッド』と日本人の思っている『カミ』とは違っています。
その違いを示した関連図式を『神とゴッドはどう違うか』から引用して 図1 に示します。
開祖が『神』という表現をされるときには、創造主(唯一神)としての『主(ス)の神』(時によっては天御中主神)と、 この一神が神々として多神に分かれて各々の天命に従って働く、その働きそのものも指しています。
これは大本教(正式には大本)の教えと同じです。道文を読む時に、そこのところを弁えれば理解しやすくなると思います。
言霊の『ア』とか『イ』はそれぞれの働きを表しているので、仮名(かな)は『神名(かな)』になります。 道教では、万物を生み出す働きを『道(タオ)』、生み出された万物を動かす力を『徳(テー)』と呼んでいますが、この道教の『道』や『徳』が神道でいう神々です。
「天地のできる前、混沌としたモヤモヤがあった。これは形も色もなく、味もなく、名前がつけられないのでかりに『道(タオ)』とよぶことにした。 この道は万物の根元で、一つに集まると『気』になり、散りぢりになると天地となる」(道教『太上妙始経』)
なお、神道では、神は名前を変えて働くことがあるので、亦の名ということで示されます。

図1.カミとゴッドの関連図式

『気』という言葉も広い意味を持っています。
開祖は、それを『真空の気(宇宙に充満している気)』と『空の気(五体が崩れないように保っている気)』とに分けられています。
『真空の気』は、古神道の『一霊四魂』、ヨーガの『プラーナ(prana)』、道教の『?(き、先天の一気、浩然の気)』と同義です。
日本人が通常認識している『気』は『気持ち』『気分』『関心』『心』などの意味が多いようですが、『真空の気』と『空の気』を今の言葉で言えば、 宇宙や人体などが持っているエネルギーと言って良いでしょう。
波動(振動)と情報(意識でコントロール出来、伝達出来る)を持ったエネルギーと理解されています。
宇宙のエネルギーである『気』は、また、『神』と同義で述べられることもあります。

道文にある神名(しんめい)と特別な用語の意味については、別表1、別表2に示します。
神名については、『霊界物語』には『古事記』にはない意味が加えられています。
開祖は、『霊界物語』の方に立脚していますが、武道の実践を通しての体験から解釈を変えている部分もあります。用語についても同様です。