合気道開祖の教え
11)合気道
「合気は人命を救うためにあるのである。
すなわち人殺し予防法が合気の道である。
人を殺すなかれが合気であり『合』は『愛』に通じえるので私は私の会得した独自の道を『合気道』と呼ぶ事にしたのである。
したがって従来の武芸の人々が口にする『合気』と、私のいう『合気(武産合気)』とは、その内容、本質が根本的に異なる。
このことを皆さんはよく考えてほしいと願うものである。
この道は、相手と腕力・凶器で戦い、相手を腕力・凶器で破る術ではなく、世界を和合させ、人類を一元の下に一家たらしめる道である。
宇宙の心とは何か?
これは上下四方、古往今来(こおうこんらい)、宇宙のすみずみにまで及ぶ偉大なる『愛』である」
「合気道とは、宇宙万世一系の理である。
合気道とは、天授の真理にして、武産の合気の営みであります。
合気道とは、天地人、和合の道とこうなるのであります。
また合気道とは、万有の処理の道(無抵抗主義)であります。
合気道とは、言霊の妙用であり、宇宙みそぎの大道であります。
この道を思惟する人々は、宇宙建国完成の経綸に奉仕しなければならないことになっております」
『地上天国建設』のための『愛の武道』が合気道で、これは『宇宙の真象』に立脚した『武産合気』でなければなりません。 それが開祖に降された神示でした。
「心ある人々は、よって合気の声を聞いて頂きたい。
人をなおすことではない。
自分の心を直すことである。
これが合気なのである。
また合気の使命であり、また自分自身の使命であらねばならない」
今まで述べてきた開祖の教えに沿えるよう、合気道の稽古が、『愛気道』の稽古となるように心掛けたいと思います。
そのための修練方法をまとめると次の3つになります。
① 宇宙と繋がるために『宇宙の妙精』を吸収する、
② 宇宙と繋がった『天の浮橋』に立つ、
そして、
③ 魂の比礼振りによって宇宙の響きと共鳴して宇宙の気を調整する。
- ① 宇宙の妙精を吸収する。
- 開祖の書に「魂之霊出振(のためには) 妙精吸収(が必要)」があることは前に述べました。
気の力(呼吸力、エネルギー)を高めることは、畳の上の稽古だけでは十分ではありません。
開祖は、顕斎・幽斎修行によって妙精を吸収されたようです。
神道の修行と思えば腰が退けてしまうでしょうが、方法は気功、ヨーガとほとんど同じです。
酸素を吸って二酸化炭素を吐く肺呼吸に<念(イメージ)>を加えたものです。
しかし、座禅や気功で胎息をする方法は、時間が少し長くかかるようです。 -
「金もいらぬ、名誉もいらぬ、命もいらぬ人」と言われた山岡鉄舟で、発心から大悟までに17年掛かっています。
これらの行にはもう一つ大切な要素の<響き>が欠けていたからではないかと思います。 -
「『気の妙用』は、呼吸を微妙に変化せしむる生親である。
これすなわち武なる愛の、本源である。
『気の妙用』によって心身を統一し、合気の道を行ずるとき、呼吸の微妙なる変化はここよりおのずから流れいで、業は自由自在にあらわれる。
ここの呼吸の変化なるものは、宇宙遍在の根元の気と気結びし、さらに生結びし、そして緒結びすることによって宇宙化する。 と同時に、呼吸の微妙なる変化は五体に喰い込み、深く喰い入ることによって、五体のはたらきを活性化し、活発に神変万化の動きをおのずからうながすこととなる。
かくしてこそ、五体の五臓六腑ははじめて熱と光と力が生じ結ばれることとなり、己れの五体は己れの心意のままになる。 心身一如、しかも宇宙と一体化して作動する。
呼吸の微妙なる変化はまた、真空の気に微妙な変化を生ぜしめる。
極烈なる波動あり、遅鈍なる波動あり、その両々相俟つ波動の変化をもってして、己が心身の凝結の純度のいかんがわかるのである。
すなわち全き凝結が心身にみなぎるとき、呼吸はおのずから宇宙に同化しつつ円やかに大きく拡がってゆくのであり、また呼吸につれておのずから、 己れがうちに収束されてくるのである。
そのように呼吸が宇宙化しつつおこなわれうるならば、不可視の精神の実在が己れの身辺に集結し、あたかも己れを守護し列座するかの感をもってつつむのである。
これ合気妙応の、初歩の導きである」 -
「五体は宇宙の創造した凝体身魂で、宇宙の妙精を吸収し、宇宙と一体になって人生行路を修している。
修行には、まず己れの心魂を練りにねり、かつ<念>の活力を研ぎすまし、心と肉体の統一をはかることこそ先決である。 これこそ、すすんで業の発兆の土台となり、その業は<念>によって無限に発兆する。
業はあくまで、宇宙の真理に合していることが不可欠である。そのためには正しい<念>が不可欠である」 -
「その<武産>の武のそもそもは<雄叫び>であり、五体の<響き>の槍の穂を阿吽の力をもって宇宙に発兆したるものである。
五体の<響き>は心身の統一をまず発兆の土台とし、発兆したるのちには宇宙の<響き>と同調し、相互に照応・交流しあうところから合気の<気>を生じる。
すなわち、五体の<響き>が宇宙の<響き>とこだまする<山彦>の道こそ合気道の妙諦にほかならぬ。
そこに高次の身魂の熱と光と力とが生じ、かつ結ばれることとなる。
微妙にこだまする五体と宇宙の<響き>の活性が『気の妙用』を熟せしめ、武なる愛、愛なる武としての<武産合気>を生ましめるのである」 - 開祖が幽斎修行をされた時の方法も<念>を使っています。(『合気神髄』p.126参照)
- 「幽斎は目をつぶって宇宙の根元、造り主に遡ってゆく。 それには自己を宇宙の成り立ちに突き戻し、宇宙建国のおもいが大虚空の中に忽然と現れて、 その根元から宇宙の成り立ちの気の動きに持っていかなければなりません」
-
「正坐をやってみましょう。
心で鼻の奥を眺め、へその緒まで通す。
ひびきで開く。
宇宙の営みの世界を感じ見る。
匂い、色、気の営み。左の足の親指で右を包む。・・・修法は、指を結び目をつぶって下さい。
すべて心が定まってくると姿に変わって来る。
深呼吸のつもりで魂で宇宙の妙精を集め、それを吸収する。
なぜかといえば自分に必要だからみな吸いとるのだ。
まず自分の腹中を眺め、宇宙の造り主に同化するようずーと頭に集め、造り主に聞く。
すると気が昇って身中に火が燃え、霊気が満ちて来る。それでいいのです」 -
開祖の場合、<響き>については、毎朝の東天を拝しての祝詞奏上であったと思います。
「朝東天を拝すると、宇宙の三元のご神徳により、三界に和合し、三界を守る処の神気が身にくいこんでくるのを覚える」 -
自分で呼吸を行うなら逆腹式呼吸で、正座でも立ってでも構いませんが、息を吐く時、吸う時にイメージ<念>とともに座り技呼吸法のように手を
動かし、イメージで臍下丹田まで気を導きます。
そこで愛の気に発酵させてから手を伸ばし、指先から気を出すようにイメージして息を吐きます。
その際、アーオーウーエーイーでも、スーでもシーでも音や声(響き)を出すのが良いようです。
時間は短くても毎日続けると効果があります。
一般の気功のように動作がないイメージだけのものだと、周天で気が回りだして止まらなくなる恐れがあります。
参考までに、種々の呼吸法の特徴を紹介します。
新倉式呼吸法:強い気を体内に取り込む手法(歯に息を当てて響きを出す)
西野流呼吸法:足芯呼吸という全身の細胞を活性化させる手法
ヨーガ呼吸法:内臓、筋肉、呼吸器系や自律神経系をやさしく刺激
信念呼吸法:呼吸を制御すると同時に、信念をもって念ずることにより健康を増進
呼吸をする時間や場所も重要で、エネルギーが高いのは朝日が出ている時間、巨石、巨木の傍と滝などの摩擦がある場所です。
場のエネルギーが高くないと効果が出るまでに時間がかかります。
昔からの山篭り、滝行には、このような意味があります。
開祖が黄金体体験をした頃に住んでいた場所は、突風が吹くような激しい音が聞こえたり神棚などが鳴動したりで、随分エネルギーが高かったようです。
天風先生も巨石の上に座って、場のエネルギーを吸収したのが良かったようです。
開祖がされた『下座の行』も波動を上げます。下座の行として公園のごみ拾いやトイレ掃除などを行っている人もいます。
開祖が玄米食であったとのことなので紹介しますが、食事は白米よりも玄米の方が波動(エネルギー)が高い食べ物になります。
天の鳥船の行(船漕ぎ)や振魂の行も気を高めるためのものです。何百回か行います。
- ② 天の浮橋に立つ。
- 開祖は、神楽舞(天神楽)で天と地との中心に立ちました。
体は縦(正中線を真っ直ぐ)、心は横(膝の力を抜き、臍下丹田を意識する)で、宇宙の中心に居るという気持ちになって立ちます。
稽古中も、正中線を真っ直ぐします。
- 「神と万物が愛と熱と光と力によって、同根一体となって業を生むのが武の本義であり、 またこれが善の大愛であるところの主(ス)の大神の目的であり、御働きであります。
大神の御心にかなう御経綸の武を生むのが合気の使命であります。
それには美わしくこの浮橋に立たねばなりません」 - 「神と万物が愛と熱と光と力によって、同根一体となって業を生むのが武の本義であり、 またこれが善の大愛であるところの主(ス)の大神の目的であり、御働きであります。
- ③ 魂の比礼振りによって浄めの技を行う。
- 魂の比礼振りは力が要らない気の導きなので、決して崩してやろう、投げつけてやろう、あるいは痛くしてやろうなどと考えないことです。
そのような争いの気持ちには相手が同調出来ません。
魂の比礼振りは呼吸力とも関連しています。 - 気はエネルギー、波動です。
したがって、脳波にも関係していて相手が感応します。
人間が考え事をしている時はβ(ベータ)波(13〜30 Hz)ですが、 相手と争ったり怒ったりしていると周波数の高いγ(ガンマ)波(30 Hz以上)が出ます。
α波(8〜13 Hz)は、あらゆることを肯定的に受け止めた時に出ます。
それで、相手が手を取ってきたら、手を外そうとしないで「手を取ったね、そのまま持っていてね」と考えだけで、相手の手が離れないで導かれます。
また、笑いによってもα波が出ます。
稽古中に笑うなという指導もありますが、「練習は常に愉快に実施するを要す」が開祖の教えです。
感謝の気持ちでいるとθ(シータ)波(4〜8 Hz)、社会に奉仕しようとか慈愛の気持ちになるとδ(デルタ)波(0.4〜4 Hz)が出ます。
地上天国建設の気持ちで稽古すれば、δ波が出るようになると思います。
スポーツの一流選手がプレーしている時はミッドα(アルファ)波(11 Hz)以下になっています。
合気道の稽古も、一流選手並みになりたいものです。 -
脳波は周波数が低い落ち着いた脳波の方に支配され、感応するようです。
演武大会で気の技の演武があると、思わず頬が緩むのは感応しているからではないかと思います。
「そんなことあり得ないよ」という気持ちからだけではないようです。
欠伸がうつるのもそのせいかなと思います。 -
「真の合気道は、相手を倒すだけでなく、その相対するところの精神を、相手自らなくすようになさなければならないのである。
地上に現われたものと、その精神とが一如となって、和合するように日々の稽古をしなければならない」 -
「合気は大きく和するの道にして、宗教にいう天国とか或いは大宇宙完成に対し、その羅針盤として実現を計るの道である。
即ち敵の無い境地、相手の無い世界、造物主が造られたこの地球上で何の争いを起こす必要があろう。
愛と和合の真心によって、中心に帰一し、美しい天国浄土の世界を築くことが、この道に与えられた使命であり生命である。
そして、この使命を達成するには、たゆまざる修練によって正勝吾勝の境地を自悟しなければならない」 -
「私は人間を相手にしていないのです。
では誰を相手にしているのか、強いていえば神様を相手にしているのです。
人間を相手にしてつまらぬことをしたり言ったりするから、この世はうまく行かないのです」 - 「一筋にするどく気をばかけぬれば 我体こりて敵に通らず。
ゆるりと行けば 気ひろがり敵に通ず。
一筋にするどくこりかたまれば 先にすぼみ、我心持ち良きなれど 敵に通ぜず。
ゆるやかに動かず行けば 気は敵をおおい通すぞ不思議なりける」(山岡鉄舟) - 技は気形の稽古になってきますが、それでは初心者に分からないので、通常の形の反復稽古の中で気の技の稽古をしたら良いでしょう。
- 「合気の稽古はその主となるものは、気形の稽古と鍛錬法である」